
「OMOYA」という名前は、日本語の「母屋(おもや)」からつけました。
もしかすると、「母屋」という言葉を初めて聞く方もいらっしゃるかもしれません。
母屋とは、蔵や納屋、離れなどとは区別される、
家の中心となる建物のことです。
「主屋」と書く場合もありますが、どちらかというと建築や法令の分野で使われる表記です。
私が惹かれたのは、その名前に使われている「母」という字でした。
家の中心を表す言葉に、なぜ「父」ではなく「母」という字が使われるようになったのか。
私なりに考えてみました。
性別も、生まれた国も関係なく、生きとし生けるものすべてに共通していることがあります。
人はみな、母の胎内で育ち、この世界に生まれてくることです。
母の胎内は、人生で最初の居場所であり、もっとも安全で温かな場所なのではないでしょうか。
だから昔の人は、帰る家もまたそんな場所であってほしいという願いを込めて、「母」という字を使ったのではないか。
そんなふうに想像しています。
この宿もまた、訪れた人がふっと力を抜き、思わず「ただいま」と言いたくなるような場所でありたいと思っています。
中央に灯る照明は、国際的環境芸術家の故・八木マリヨ氏がデザインされた「nahwa」。
「万物はすべて螺旋の動きにある」という、マリヨ氏が提唱された「縄ロジー」の思想から生まれた光です。
その姿は、母と子をつなぐへその緒のようにも見え、
空間の中で静かに揺れています。
マリヨ氏とご縁をいただいたのは18年前のことでした。
「nahwa」は、マリヨ氏ご本人からOMOYA総領に寄贈していただいた大切な作品です。
この家に刻まれた記憶や物語、そして過去から現在へと続く時間を結ぶ存在でもあります。
リビングの十字窓は、
メキシコの建築家ルイス・バラガンの自邸に着想を得てデザインしました。
あとになって知ったことですが、
八木マリヨ氏もその場所を訪れたことがあったそうです。
大きく開くこの窓は、内と外をつなぐ境界であり、
世界へひらかれた入口でもあります。
この場所で少し休み、静かに力を取り戻す。
そしてまた、それぞれの世界へ帰っていく。
その時間はどこか、もう一度生まれなおすことにも似ているように感じます。
世界中の人にも訪れてほしいという思いから、
名前はローマ字で「OMOYA」としました。
母屋という言葉そのものは日本のものですが、
安心できる場所を求める気持ちは、
国や文化を越えて誰もが持っているものだと思っています。
そしてもうひとつ、「総領(Soryo)」というこの土地の名前を添えました。
この家は、父が生まれ育った家であり、
私にとって命のルーツともいえる場所です。
また、この場所が今日まで受け継がれてきたのは、
長い年月にわたって総領という土地を守り続けてこられた方々のおかげでもあります。
私は、この土地が持つ歴史や記憶とともに、
「Soryo」という名前を世界の人たちにも届けたいと思っています。
訪れた人がこの場所でひとときを過ごし、
総領という土地を心に留めてくださること。
そしていつかまた、この場所を思い出していただけること。
OMOYAという名前で世界へひらき、Soryoという名前でこの土地につながる。そんな思いを込めて、この場所を 「OMOYA Soryo」 と名付けました。
